妊婦さんがいくらを食べるときの注意は?【看護師が解説】

妊娠する前には、気にせずに食べていたものでも、妊娠すると食べても大丈夫かなと気になってしまいますね。

魚の卵であるいくらも食べても大丈夫かどうか、気になる人は多いでしょう。

ここでは、妊娠中にいくらを食べても大丈夫かどうか、どんなリスクがあるのか、安全な食事をするにはどんなことに気をつければよいのかなどについてお話します。

いくらとはどういう食べ物か?

女性

いくらとは、サケの卵です。

一般的には加熱せず、塩漬けや醤油漬けにして食べることが多いですね。

いくらには、次の栄養素が豊富に含まれています。

カロリー

パックに入っているお寿司のいくらは、約10gで。

カロリーは、約27kcalです。

いくら丼のいくらは、約50gです。

ビタミンB12

葉酸と共に赤血球の形成のサポートする働きがあります。

ビタミンD

カルシウムやリンの吸収を良くして、丈夫な骨や歯を作ります。

毛的中のカルシウム濃度を一定に保つ働きがあります。

ビタミンE

抗酸化作用があり、細胞の健康を助ける働きがあります。

ビタミンA(レチノール)

皮膚や鼻、のどなどの粘膜を正常に保つ働きがあります。

妊娠中はいつでも避けたほうがいい?

妊娠中は、全期間を通していくらを食べるのは、控えておいたほうが良いでしょう。

理由は、一般的に加熱されていないからです。

どんな影響があるのか、次にお話しましょう。

妊娠中にいくらを避けたほうがいい理由

妊娠中に、いくらを避けた方が良い理由を説明します。

食中毒

妊娠中に、加熱されていないいくらを食べると、リステリアやアニサキスなどの食中毒を起こす可能性があります。

妊娠中は、免疫力が低下しているため、食中毒になりやすい状態です。

塩分の摂り過ぎ

いくらには、塩漬けや醤油漬けされたものが多く、食べ過ぎると塩分の摂り過ぎにつながる可能性がありますので、注意が必要です。

塩分を摂り過ぎると、血圧が高くなったり、むくみがひどくなったりすることもあります。

いくらの危険性

妊娠中にいくらを食べる危険性が指摘されていますので、お話しましょう。

リステリア

妊娠中は、免疫力が弱まっているため、少量のリステリア菌でもリステリア症になることがあります。

リステリアの原因、症状、治療などについて説明しましょう。

【原因】

リステリア菌は、普段私達が生活している中にも広く存在する菌です。

リステリア症は、リステリア・モノサイトゲネスが原因で発症します。

生肉やナチュラルチーズなど、加熱されていない食物から感染します。

【潜伏期間】

24時間未満〜3日以上、1ヶ月以上の場合もあります。

【症状】

一般的には、リステリアをたくさん摂取しなければ発症しません。

発症したとしても、軽症で自然に治癒することが多いのです。

リステリア菌に感染した時の症状には個人差があり、発熱、悪寒、筋肉痛などの症状が出ます。

他の感染症との区別がつきにくく、敗血症や髄膜炎、中枢神経症状などを引き起こすこと(リステリア症)があります。

妊婦さんが感染すると、流産や早産、新生児にも影響を及ぼす可能性があります。(参考文献1)

妊婦さんは発症した場合の主な症状は、発熱、悪寒、背部痛などで、赤ちゃんが生まれた後に数日で死亡するとされています。

【治療】

ペニシリン系などの抗生物質の投与がなされます。

セフェム系の抗生物質は無効とされています。(参考文献2)

アニサキス

アニサキスとは、寄生虫の一種です。

アニサキスの幼虫は、長さ2-3cm、幅は0.5-1mmほどです。

見た目は、白い太めの糸のように見えます。

サバ、アジ、カツオ、イカなどの魚介類に寄生する寄生虫です。

【潜伏期間と症状】

急性胃アニサキス症は、食べたあと数時間から数十時間で発症します。

急性腸アニサキス症は、食べたあと数十時間後から数日後に、激しい下腹部痛や腹膜炎症状が出ます。

多いのは、急性胃アニサキス症です。

【治療】

胃アニサキス症では、胃内視鏡でアニサキスを摘出します。

腸アニサキスでは、症状に応じた治療を行い、必要があれば手術します。

アニサキスに効果的な駆虫剤は開発されていません。

【予防】

60℃以上で1分以上の加熱、または-20℃で24時間の冷凍が効果的だとされています。(参考文献2)

また、新鮮なうちに内臓を除去することも良い方法です。

アニサキスは、寄生する魚介類が死ぬと、内臓から出てきて筋肉へ移動することがわかっているからです。

なお、わさびや酢がアニサキスの予防に有効ではないかという節がありましたが、食べるときの量や時間では効果がないことがわかっています。(参考文献2)

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群は、昔は妊娠中毒症と呼ばれていた病気です。

妊娠中に、何らかの原因で高血圧が起こり、母体の血管障害や臓器障害が起こる全身性の症候群のことを言います。

【症状】

妊娠20週以降から分娩後12週までの期間に、高血圧、または高血圧に尿蛋白を伴い、かつこれらの症状が単なる偶発的な合併症によるものではない場合、妊娠高血圧症候群といいます(参考文献1)。

軽症での高血圧は、収縮期血圧が140−160mmHg未満、拡張期血圧90−110mmHg未満です。

これ以上になると、重症です。

【治療】

安静と食事療法、降圧剤の使用などで治療します。

重症で、赤ちゃんが充分成熟している場合は分娩させます。

ビタミンA過剰摂取

動物性食品に含まれるビタミンAをレチノールといいます。

これを摂り過ぎると、下記のような症状があります。

妊娠中のビタミンAの摂取奨励量は、730-780μgRE程が良いとされています。

【症状】

急性の症状は、悪心、嘔吐、腹痛、めまい、過敏症などの症状が出た全身の皮膚が剥がれてくる症状が現れます。

慢性の症状は、全身の関節や骨の痛み、皮膚の乾燥、脱毛などが現れます。

これらは、連日25000I.U(I.Uは国際単位で、25000I.Uは7500μgREに相当します)を摂取すると慢性症状が現れると言われています。

【治療】

ビタミンAの摂取を中止します。

特にサプリメントの服用をやめると、症状は改善します。

【赤ちゃんへの影響】

レチノールは、胎盤から赤ちゃんに運ばれます。

妊娠初期にレチノールを多く摂ると、胎盤を通じて赤ちゃんの耳の形態異常などの奇形が起こる可能性が示唆されています。

【予防】

サプリメントからの過剰摂取のケースが報告されています。

ビタミンAが含まれているサプリメントを複数飲まないようにすることが重要です。

入っている量を確認しましょう。

妊婦さんにとって安全な食事を心がける

安全な食事を心がけることは、妊娠していなくても普段から大切なことですね。

ここでは、妊娠中は特に気をつけてほしいポイントを説明します。

どの食品が安全か確認する

妊娠中に食べてもいいもの、食べない方が良いもの、量など注意が必要なものがあります。

食べない方が良いのもの、どんな注意が必要なのかをあらかじめ確認しておきましょう。

基本的に、火が十分に通ったものを食べましょう。

新鮮なものを選ぶ

新鮮な食材を選ぶようにして、よく火が通されているかどうかを確認しましょう。

妊娠中は、免疫力が弱まっていますので食中毒になりやすい状態であると考えましょう。

よく火を通す

よく火が通されているかどうかを確認しましょう。

妊娠中は、免疫力が落ちていますので、火が通っているものを食べたとしても、食中毒になったり体調が悪くなりやすい状態です。

料理したら早く食べる

料理したら、できるだけ早く食べましょう。

料理して時間がたつと、細菌の繁殖が心配です。

「買ったらできるかぎり早く料理する」「料理したものはできるかぎり早く食べる」ことを心がけましょう。

時間がたったものは処分する

料理して時間がたってしまったものは、思い切って処分しましょう。

特に梅雨の時期や夏には、温度や湿度が上がるため、冷蔵庫に入れていても細菌の繁殖が心配です。

冷蔵庫を過信しない

リステリア菌など、冷蔵庫に保存していても繁殖する菌もありますので、注意が必要です。

「冷蔵庫で保存していたから大丈夫」と思わず、早めに料理して食べてくださいね。

調理器具の清潔を保つ

料理に使用する器具や、料理する人の手指を清潔に保ちましょう。

手洗いはもちろんのこと、「肉や魚などを調理するまな板は、生野菜に使用するものとは別にする」「鍋や調理器具、ふきんなどを清潔に保つ」ことも心がけると良いですね。
熱湯消毒もおすすめです。

保冷剤と保冷バッグを利用する

買った食品は、保冷剤や保冷バッグに入れて、新鮮さを保てるようにできるだけ冷やして持って帰り、できるだけ早く冷蔵庫へ入れるようにしましょう。

まとめ

日光浴

妊娠中にいくらを食べても良いかどうか、どんなリスクがあるのか、安全な食事をするにはどんなことに気をつければよいのかなどについてお話しました。

妊娠中に、いくらのお寿司を一つ食べただけでは、塩分もビタミンAも摂り過ぎにはなりません。

妊娠中には抵抗力が低下していること、いくらは加熱処理されていないことで、食中毒を起こす可能性がありますので、注意しましょう。

妊娠中は、制限されることが多いのですが、赤ちゃんのために乗り越えられるといいですね。

参考文献

  1. 医療情報科研究所編集(2009)『病気が見える』vol.10 産科(第2版)メディックメディア(P92).
  2. MSDマニュアル 家庭版
  3. 日本人の食事摂取基準2015年版」