不育症の原因や検査方法、治療【看護師が解説】

皆さんは、不育症という言葉をご存じですか?不妊症と混同して考えられがちな不育症。しかし、本当は、全く違うのです。不育症とは何か、不妊症とどこがちがうのか見てみましょう。

不育症とは

不育症とは、妊娠を維持できず、流産を繰り返えす、死産になってしまうことをいいます。

具体的には、2回流産を繰り返す「反復流産」、3回以上流産を繰り返す「習慣流産」、生後1週間以内に赤ちゃんが死んでしまう「早期新生児死亡」、これらは不育症と定義されています。

不育症は、妊娠することは可能なのです。

しかし、その後、妊娠を継続することが難しい。つまり、妊娠成立後に問題や障害があることを指します。

不育症の原因

実は、不育症の原因の中で一番多いのが、偶発的流産やリスク因子不明だといわれています。

全体の65%は、偶然に胎芽、胎児の染色体異常が起こったケース、また原因が分からない流産だとの調査報告が発表されています。

現時点では、原因がある程度特定されているものに、次の4つの要因が考えられています。

1.甲状腺異常や糖尿病等の内分泌異常

甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症、どちらも流産のリスク要因となります。

甲状腺疾患は、自己免疫疾患(自分で自分を攻撃してしまう病気)です。

自己免疫疾患の人は一つだけではなく、たくさんの自己抗体(自分を攻撃してしまう物質)を持つ可能性が多いとされています。

不育症のリスク因子となる自己抗体をもっていれば、流産を繰り返してしまうのです。

糖尿病の場合は、胎児が正常に発達・発育できないことから流産につながるのではないかと考えられています。

妊娠前の血糖コントロールが重要となりますね。

2.血液凝固異常

不育症のリスク要因となるのは、血栓ができやすくなる血栓形成傾向の血液凝固異常です。

胎盤中の血液が固まり、血栓ができることにより、胎児への酸素・栄養の供給が滞り、それが要因となって、子宮内で胎児が死亡し、流産に至ってしまいます。

女性は妊娠すると、血が固まりやすい血液凝固系の体質に傾きます。

これは、血が固まりやすいよう変化することで、出産時に起こる大量出血を防ぐためだと考えられています。

そのため、妊娠中は、妊娠していない時に比べて、血栓ができるリスクは5~6倍にもなるといわれています。

血液がゆっくり流れる胎盤は、血栓ができやすい場所で、そこに、血液凝固異常のリスク因子が重なることで、さらに血栓ができやすくなるのです。

3.子宮形態異常

生まれつき、子宮の形に異常があることを子宮形態異常、または子宮奇形といいます。

子宮は、もともと2つあったものが、進化の過程で融合して1つになったと考えられています。

融合不全のために子宮形態異常が起きますが、普通に生活する分には問題はないので、妊娠や流産を機に発見されることが少なくありません。

これら子宮形態異常の方の中には、正常分娩で知らずに出産している方も多くいるとみられています。

子宮の形が異なるといっても、外見は普通の子宮と変わらない症例がほとんどで、子宮の内側、つまり胎児を育てる内腔の形が別の形をとるケースが多くみられます。

子宮形態異常には、「中隔子宮」「双角子宮」「弓状子宮」「重複子宮」「単角子宮」の5つのタイプがあります。

中でも「中隔子宮」が不育症のリスク要因に挙げられます。中隔子宮とは、子宮の内側に仕切りがあり、真ん中の中隔が子宮の内側を左右に分けているものをいいます。

この仕切りには、ほとんど血流がないため、そこに着床してしまうと、流産を起こすのではないかと考えられています。

4.夫婦の染色体構造異常

夫婦のどちらかが染色体に構造異常をもつために、流産を繰り返してしまうことがあります。

主に妊娠の初期段階に流産してしまうケースが多いです。流産のリスク因子となる染色体異常は、「転座」という染色体の一部が入れ替わってしまう状態だといわれています。

染色体構造異常を治す治療法は、残念ながらありません。

しかし、理論上では、染色体構造異常があっても出産は可能です。赤ちゃんは、パパとママそれぞれ半数の染色体を引き継ぎます。

染色体全部に異常があるわけではなく、一部ですから、理論的には半数が染色体は正常で、半数は親と同じ転座の染色体をもつことになり、流産しやすくなる。

もっと詳細にデータ解析したところ、6回妊娠すると2回は出産が可能だという結果もでています。ただし、これは、あくまでも理論上の問題です。

検査方法

これまでの医学的報告から原因とされているものを、ひとつひとつ丹念に検査していく必要があります。不育症の初期の検査には、以下のようなものがあります。

1.子宮形態検査

これは、子宮の形態異常の有無を調べるために、超音波断層検査や子宮卵管造影検査を行います。

子宮卵管造影検査とは、膣から造影剤を注入し、レントゲン撮影をして子宮の形をみるものです。人によっては、痛みを感じる場合もあります。

2.内分泌検査

採血をし、甲状腺機能や糖尿病について調べます。

3.夫婦染色体検査

採血をし、染色体構造異常がないかを調べます。採血は、夫婦ともに行います。

4.抗リン脂質抗体検査

採血によって検査を行います。

上記に挙げた検査は、一次スクリーニングといわれるもので、ほとんどが保険適用内です。

しかし、この一次スクリーニングの結果を受けて、さらに原因を特定していくための検査を必要とする場合は、多くの検査が保険適応外で費用負担は大きくなります。

自治体によっては、不育症に対する助成金制度を設けているところもありますので、調べてみましょう。

また、検査を受ける時には、検査の必要性や費用に加え、検査結果をどのような形で報告をうけるのか、医師も含めて十分検討し、相談の上行いましょう。

例えば、染色体検査の結果については、夫婦のどちらに原因があったのかは特定せず、染色体異常が原因であるとの報告だけを受けることもできます。

この場合、どちらに原因があろうとも、治療法はないわけですから、個人を特定する必要があるかどうか、夫婦で十分に話し合う必要がありますね。

治療

1.抗凝固療法

自己抗体や血液凝固異常をもっている場合には、血液を固まりにくくする治療をすることで、妊娠が継続できるようになります。治療法となる抗凝固療法には、「低用量アスピリン療法」「アスピリン+ヘパリン療法」などがあります。

1)低用量アスピリン療法

アスピリンには、血小板をおさえ、血液をサラサラにする効果があります。

これは、内服治療となるのですが、内服できるのは、妊娠28週までの妊婦となります。

日本では、出産予定日12週以内の妊婦には、アスピリン投与を禁忌としています。

その理由としては、妊娠期間の延長、動脈管の早期閉鎖、子宮収縮の抑制、分娩時出血の増加につながる恐れがあることが挙げられています。

しかし、現時点でアスピリン服用により、異常が生じたという報告は見当たりません。

ただ、理論的には起こる可能性があるので、禁忌ということになっているようです。

また、次のような方には、投与できません。

  1. サリチル酸系製剤に対し過敏症の既往歴のある方
  2. 消化性潰瘍のある方:プロスタグランジン生合成抑制作用により、胃の血流量が減少し、消化性潰瘍を悪化させることがあります。
  3. 出血傾向のある方:血小板機能異常が起こることがあるため、出血傾向を助長するおそれがあり
    ます。
  4. 重篤な血液の異常のある方:血液の異常をさらに悪化させ、重篤な副作用が発現するおそれが
    あります。
  5. アスピリン喘息、又はその既往歴のある方:重篤なアスピリン喘息発作を誘発させることがあります。

2)アスピリン+ヘパリン療法

ヘパリンは、血液凝固因子を抑えることにより、血栓を予防します。

アスピリンで血液をサラサラにし、ヘパリンで血栓を予防するのが、治療の目的です。この治療は注射となります。

ヘパリンは血小板減少症や肝機能低下という副作用を起こすことがあります。

ヘパリンを開始してから数週間は、血小板数の検査や肝機能検査をすることが大切です。

ヘパリンは、胎盤を通すことがないので、胎児への影響は少ないとされています。

2.手術

対象となるのは、中隔子宮が子宮形成術の対象となります。

これは、手術で、子宮の血管分布がまばらな組織を取り除き、血管の豊富な組織同士を縫合して、子宮環境を胎児のために再構築します。

3. 染色体異常の場合

染色体構造異常が発見されたら、充分な遺伝カウンセリングを受けましょう。

累積生児獲得率は染色体正常カップルと比べても決して低くありません。着床前診断等についても医師とよく相談しましょう。

家庭で気を付けること

    1. 禁煙:喫煙は流産に関与する可能性がありますので禁煙としましょう。
    2. 禁酒:過度のアルコールは控えましょう。
    3. 妊娠が判明したら次のことに気をつけましょう。
      1. 重いものを持つ
      2. 激しいスポーツや行動
      3. 体を冷やす
      4. 過労、ストレスを避ける
    4. パートナーや家族にお願いしたいこと:妊娠した場合、優しく接することが流産率を低下させます。特にパートナーができるだけ優しい言葉をかけてあげることが、とても大事です。

ストレスと流産の因果関係は、はっきりしていませんが、ストレスが無い方が妊娠成功率はあがるとのデータがあります。

流産を繰り返すことは、相当なストレスになります。「次の妊娠でも同じことを繰り返すのではないだろうか。」などの、不安や心配と闘っています。

そのため、メンタル面でのケアが必要です。カウンセリングを受ける等をして、ストレス改善に努めましょう。

4.パートナーや家族にお願いしたいこと
妊娠した場合、優しく接することが流産率を低下させます。

特にパートナーができるだけ優しい言葉をかけてあげることが、とても大事です。

まとめ

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今は、不育症のリスク因子も分かり、治療法も確立されつつあります。

「もう出産は出来ないかもしれない」とあきらめないで、専門家とよく相談しながら、自分たちに合う方法を見つけていきましょう。