【歯科医が解説】乳歯が生える時期、乳歯が生え変わる理由。

はじめに

基本的には、ヒトは歯を一本も持たずに生まれてきます。成長するにつれて、まず乳歯とよばれる子供の歯が生えてきます。
乳歯は、全部が同時に生えてくるわけではありません。成長とともに順番に少しずつ生えてきます。

乳歯

 

乳歯

ヒトの乳歯は、永久歯と同じく前歯と奥歯にわけられます。
前歯を乳前歯、奥歯を乳臼歯とよびます。
 

乳歯は、全て生え揃うと乳前歯が12本、乳臼歯が8本で、合計で20本になります。
ちなみに、永久歯は、前歯が12本、臼歯(奥歯)が親知らずを含めれば20本の合計32本、含めなければ16本の28本です。
永久歯と比べると、前歯の数は同じですが、臼歯(奥歯)の数が永久歯の半分以下しかありません。
歯の大きさも違いますが、数も違うのです。
 

乳歯の名前

永久歯と同じく、乳歯にもそれぞれ名前が付けられており、中心から「乳中切歯」「乳側切歯」「乳犬歯」「第一乳臼歯」「第二乳臼歯」とよばれます。
 

20本もある乳歯を1本1本、”乳なんちゃら歯”とよぶのはたいへんなので、歯科医師や歯科衛生士などの歯科医療者は、略号でよんでいます。
 

前から順番にアルファベットで表記し、「A」「B」「C」「D」「E」としています。たとえば、左側下顎第一乳臼歯は、「左下D」といった具合です。
 

ところで、むし歯の略号は、むし歯の英語表記であるDental Cariesからとった「C」です。「D」じゃないですね。
たとえば右側下顎乳犬歯「右下C」がむし歯の時、Cを繰り返すことになり「右下C、C」となります。
書けば何となくわかることでも、声にだしてみると「みぎしたしーしー」となり、わかりにくくなってしまいますが、そこは専門家、ちゃんと理解しています。
 

乳歯の生える年齢

ヒトの歯は、乳歯と永久歯と2種類あるのが特徴です。生まれた時には歯は生えておらず、しばらくしてから生えてきます。
 

乳歯は、個人差があり多少の前後はありますが、おおむね生後8ヶ月前後から生え始めます。最後の乳歯である第二乳臼歯は2歳3〜6ヶ月頃から生えてきます。そして、3歳までには全ての乳歯が生え揃い、乳歯の噛み合わせが完成します。

したがって、乳歯の噛み合わせが完成するのに2年あまりの期間が必要であるといえます。
 

乳歯の生える年齢

生後12ヶ月までに生えてくる乳歯は、下顎の「A(乳中切歯)」と上顎の「B(乳中切歯)」、「C(乳側切歯)」の3種で、これが左右両側に生えてくるので、あわせて6本だけです。

そのあと、生後12ヶ月から1歳6ヶ月(18ヶ月)の間に、「E(第二乳臼歯)」以外の永久歯が生えてきます。
その後、しばらく乳歯が生えてくるのが停止します。2歳過ぎから2歳6ヶ月ごろに最後の第二乳臼歯が生えてきます。

1歳6ヶ月健診までに、「A(乳中切歯)」から「D(第一乳臼歯)」までの合計16本、3歳健診までに、「A(乳中切歯)」から「E(第二乳臼歯)」までの合計20本生えていると覚えると、わかりやすいと思います。
 

乳歯の生える順序

一般的には、下顎のA(乳中切歯)が一番最初に生えてきます。次に上顎のA(乳中切歯)、B(乳側切歯)、下顎B(乳側切歯)と続きます。
前歯の完成には、あとC(乳犬歯)が必要ですが、このあとはD(第一乳臼歯)が先に生えます。D(第一乳臼歯)の生える順序は上顎、下顎の順です。そして、C(乳犬歯)がまず上顎、そして下顎の順に生え、最後にE(第二乳臼歯)となります。
もちろん個人差がありますから、順序が多少前後することがあります。けれども、最終的に生え揃えば問題ありません。順序の違いはさほど心配しなくても大丈夫です。不安なときは、歯科医院で相談してください。

乳歯が生え変わる理由

乳歯はやがて永久歯に生え変わります。永久歯に生え変わる理由はいろいろ考えられていますが、最も有力なのは、歯の大きさと顎の骨の大きさのバランスをとるためという仮説です。
乳歯と永久歯を比べると、永久歯の方が一回り大きい上に、数も親知らずを含めれば32本、含めなくても28本ととても多いです。
乳幼児の小さな顎の骨に、永久歯と同じ大きさの歯が生えるとすると、ほとんど生えることが出来なくなります。
そこで、顎の骨の小さい幼少期には小さな歯を、成長して顎の骨が大きくなった後は大きな永久歯に交換するように進化したのではないかと考えられています。

乳歯 生え変わり

乳歯が抜ける時

乳歯は、永久歯といずれ入れ替わっていきます。永久歯と交代するとき、乳歯の歯根が吸収されて短くなっていきます。そしてぐらぐらしはじめて抜け落ちます。
乳歯の歯根が吸収され始める年齢は、乳歯ごとに異なります。
A(乳中切歯):4歳ごろ
B(乳側切歯):5歳ごろ
C(乳犬歯):7〜8歳ごろ
D(第一乳臼歯):8歳ごろ
E(第二乳臼歯):8歳頃
歯根の吸収が始まったら直ちに乳歯が抜けるわけではありません。その後、しばらくしてからグラグラし始め、そして抜ける日が来ます。
もし、後継の永久歯が残っている乳歯の横からはみ出して生えてきたりするようなら、歯科医院でその乳歯を抜いてもらった方がいいかもしれません。

乳歯の異常

先天性歯

一般的に、赤ちゃんは生まれた時は歯が生えていません。ところが、稀に生まれたときから生えているときがあります。それを「先天性歯(せんてんせいし)」または「先天歯(せんてんし)」といいます。

先天性歯が生えていると、授乳のときに乳首を噛んで傷つけてしまうことがあります。授乳に障害が生じるようなら、歯科医院で相談することをお勧めします。
歯科医院では、先天性歯を抜歯したり、角を削って丸めてみたりと、先天性歯の状況に応じて処置を行ないます。

癒合歯

歯は、1本1本独立して生えているのが普通です。ところが、稀に2本がくっついて生えてくることがあります。
これを「癒合歯(ゆごうし)」といい、下顎の前歯に多くみられます。なお、3本がくっついて生えてくることはまずありません。

癒合歯になったとしても、その乳歯については特に何らかの治療をしなければならないことはありません。経過観察となります。
ただ、永久歯に生え変わる時期になっても、なかなか抜けないようなときは抜歯した方がいいかもしれません。そのような場合は、歯科医院で相談した方がいいでしょう。

エナメル質形成不全症

歯の色は白色のイメージがありますが、実際の永久歯の色は白というよりもむしろ乳白色です。そして、乳歯の色は、永久歯より白く、まさしく白色といった色合いです。
ところが、稀に生えてきたとき乳歯の色が黄色かったり茶色みがかっていたりしたりするときがあります。そんなときは、乳歯が「エナメル質形成不全症(えなめるしつけいせいふぜんしょう)」である可能性が考えられます。
エナメル質形成不全症であっても特に治療の必要性はないので経過観察となります。

まとめ

赤ちゃんは生まれたときは歯が生えていません。
一般的には生まれて8ヶ月前後から生え始め、3歳前に乳歯が20本すべて生え揃うとで乳歯の歯並びが完成します。歯の生えてくる順序もおおむね共通ですが、個人差があり順番が前後することもありますが、最終的に全て生えてくれば問題ありません。
乳歯には、先天性歯や癒合歯、エナメル質形成不全症等の異常が生じることがあります。こうした違いを伴う乳歯が生えてきたとしても、症状によっては特に何らかの治療が必要とならないこともあります。乳歯に不安を感じたときは、自分で悩まずに、まずは歯科医院で相談することをお勧めします。


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