赤ちゃんの歯を守るために必要なこと【歯科医が解説】

1歳男の子 歯磨き 歯ブラシ

生まれたときには全く歯のない赤ちゃんですが、生まれてから数ヶ月も経つと下顎の前側からかわいい歯が順番に生えてきます。

新しく生えてきた赤ちゃんの歯は、永久歯が生えてくるまで数年もの間、子供さんが食べたり話したりするために重要な役割を担い続けます。

ですから、大切に守ってあげなければなりません。

そこで、今回のコラムでは、赤ちゃんの歯について詳しく、わかりやすく紹介します。

赤ちゃんの歯とは?


赤ちゃんに歯が生えてくる前兆はあるのでしょうか?どこから生えてくるのでしょうか、赤ちゃんの歯について解説します。

歯が生えてくる前兆はある?

乳歯が新しく生えてくるときには、よく観察していると歯茎に変化が生じます。

まず、生えてくる場所に相当する歯茎に赤みがさしてきます。痛みを感じるかどうかは、赤ちゃん自身が痛みを訴えることがないため判断が難しいところです。

生えてくるときに、周囲のものに噛みついたり、歯茎のあたりをやたら触り始めたりすること、3歳頃に生えてくる最後の乳歯が生えてくる頃には、”むずがゆさ”を訴えることがあること、こうしたことから、おそらく痛さではなく、違和感を感じているものと思われます。

歯茎の色具合の変化、周囲のものに噛みつくなどの行動の変化があれば、乳歯が生えてくる徴候と考えていいでしょう。

赤ちゃんの歯が生え始めるのは?

乳歯は、下顎の前歯部から生え始めます。その月齢は、生後6ヶ月前後です。もちろん個人差がありますから、もう少し早いこともあれば、反対に遅れることもあります。

そして、順に乳歯が生えていき、1歳6ヶ月頃には16本ほどの乳歯が生え揃います。この後、1年あまりの期間を経て、最後の乳歯が4本生えて、乳歯の歯並びが完成します。

ですので、乳歯が生え揃うのには、2年半くらいもの年月がかかることがわかります。

1歳6ヶ月の歯科健診と、3歳児の歯科健診というタイミングは、乳歯が生えてくるタイミングでもあるのです。

歯が生えてくるときの注意

歯が生えてくる時期は、多くの場合離乳食が始まる時期でもあります。

つまり、それまでは母乳からの栄養だけだったので、お口の汚れは唾液でさらりと流されて、自然にきれいになっていましたが、離乳食が始まったら、お口のお手入れをしなければならなくなるという環境の変化が起こります。

ですので、まずはガーゼや綿棒などを使って、そして慣れてくれば赤ちゃんの仕上げ用歯ブラシで優しく磨くようにしてください。

歯茎から多少出血しても心配することはありません。汚れがたまる方が害が大きいことの方が多いからです。

また、よちよち歩くようになれば、転倒によって前歯を打撲しないよう注意が必要です。

赤ちゃんの歯について

赤ちゃんの歯、すなわち乳歯は、乳中切歯・乳側切歯・乳犬歯・第一乳臼歯・第二乳臼歯の全部で5種類あります。

これが上下顎、左右側にあるため、乳歯は合計で20本になります。

この乳歯を特定するには、例えば「右側上顎第一小臼歯」などとよぶわけですが、20本毎にそのように読んだり、カルテに表記したりするのはとても大変です。

そこで、歯科医師や歯科衛生士など歯科医療関係者は、前から順番にA・B・C・D・Eとよんでいます。

前述した「右側上顎第一小臼歯」なら、「右上D」ですから、とても簡単になります。

どんな順番で生えてくる?

では、乳歯はどんな順序で生えてくるのでしょうか?

最初に生えてくるのは、下顎の乳中切歯、すなわちAです。以下を表にまとめてみました。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
上顎 A B D C E
下顎 A B D C E

乳歯は、生えてくる順序が上記の順と異なっていても大丈夫です。

永久歯なら、生えてくる順序が平均的な順序と違っていた場合、歯並びが悪くなってしまいますが、乳歯の場合は心配ありません。

生えてくる順序が悪いから歯並びが悪くなるということは、乳歯に限っては起こりえないのです。

赤ちゃんの歯のお家でできるお手入れ

歯 乳歯

大切な赤ちゃんの歯を守るために、ご家庭で出来るお手入れ方法について紹介します。

毎日のお手入れ方法

赤ちゃんであっても、歯のお手入れを欠かすことは出来ません。

歯が生えるまでは、特にお手入れは必要ありません。唾液が汚れを洗い流すので大丈夫です。

歯が生えてくれば、まずはガーゼで歯の表面を拭うことから始めましょう。

離乳食が始まっても、下顎の乳歯が生えているだけの時期ならまだ歯ブラシはいりません。

下顎の乳歯は、唾液の流れ方の関係で自然に汚れが落ちてくるからです。

上顎の乳歯が生え始めたら、それが歯ブラシを使い始めるタイミングです。上顎の乳歯は唾液の流れだけではきれいになりにくいからです。

歯ブラシの回数は、初めのうちは1日1回程度でいいですから、まずは歯みがき習慣を身につけさせるようにしましょう。

どんなことに気を付けていればいい?

一番大切なことは、歯みがきを嫌いにさせないこと、歯みがきに慣れることです。

歯みがきを嫌いになれば、歯みがきを習慣化することは出来なくなります。そうなると永久歯が生えてからも、ずっとむし歯のリスクに悩まされ続けることになります。

そこで、歌を歌うなど楽しく歯みがきをする工夫をする、最後まで頑張れたら抱っこするなどしてしっかりほめる、決して怒らないなど、気をつけるようにしましょう。

嫌がられないための工夫

赤ちゃんの歯みがきをする上で大切なことは、赤ちゃんに歯みがきを嫌いにさせないようにすることです。

一度嫌だと思わせてしまうと、次からなかなか歯を磨かせてくれなくなる可能性があるからです。

歯みがきを嫌がらせないポイントはいくつかあります。

まずは機嫌が悪いときには無理に歯みがきをしないことです。歯みがき=嫌な記憶として残ってしまうことにもなりかねません。

次は、あやしながら歯を磨くことです。歯みがきは楽しいと思わせましょう。

最後は、じょうずに頑張れたら、しっかり抱っこしてほめてあげることです。歯みがきを頑張ったらほめてもらえるというプラスの思い出を残すのです。

フッ素

むし歯の原因は、ストレプトコッカス・ミュータンスなどのむし歯菌が産生する乳酸であることは、既に明らかになっています。

ミュータンス菌によって産生された乳酸が、歯を脱灰(溶かすこと)することで歯に穴が生じ、むし歯になるのです。

フッ素には、ミュータンス菌の活動性を抑えて乳酸の産生を邪魔したり、乳酸に溶かされた歯を治したりする効果があります。

それだけでなく歯を乳酸による脱灰から強くする効果もあります。

フッ素は、歯みがき剤やうがい薬に入っていますが、赤ちゃんにはどちらも使いにくいです。そこで、歯科医院を受診してフッ素を塗ってもらうことをおすすめします。

歯磨き剤

赤ちゃんであっても、赤ちゃんも使えるように作られた製品なら歯磨き剤を使うことはできます。

例えば、ライオンが発売しているCheck-Up formという歯みがき剤があります。

この歯みがき剤は、泡状になっており、うがいができない赤ちゃんでも使いやすくなっています。

しかも、むし歯菌から歯を守る働きのあるフッ素を950ppm配合していますから、むし歯予防の効果もあります。

研磨剤が配合されていないので、生えたばかりで弱い歯にもやさしいですし、味もミックスフルーツ味にして使いやすいように工夫してあります。

ライオンでは、この歯みがき剤を5歳まで使用するように推奨しています。

ここで挙げたのは1例に過ぎませんが、赤ちゃんにも使ってもらえる歯みがき剤があることがわかっていただけたと思います。

歯についてお家ではやってはいけないこと

歯ブラシ

同じお箸は使わない

むし歯の原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンスは、生まれた時点ではお口の中にはいません。

実は、ミュータンス菌は、他の人から唾液を介してうつってくるのです。

言い方を変えれば、他の人の唾液が触れたものをお口に入れなければ、ミュータンス菌には感染しないわけです。

そこで、他の人が使ったお箸で、赤ちゃんの離乳食を取り分けたり、熱いものをスプーンですくって口元でふぅふぅ息をかけて冷ますようなことは止めましょう。

大人と同じ歯みがき粉は使わない

たとえば、大人用の歯みがき粉のなかには、フッ素濃度が1450ppmととても高いものがあります。

こういったフッ素が高濃度に配合されている歯みがき粉は、6歳未満には使ってはならないとされています。

これはあくまでも一例ですが、研磨剤が強かったり、必要のない歯周病薬が入っていたりします。

年齢に応じた適切な歯みがき粉を使うべきですので、大人と同じ歯みがき粉は使わない方がいいでしょう。反対に、赤ちゃん用の歯みがき粉を大人が使うのは問題ありません。

飲み物にも注意

ジュースのような甘い飲み物を赤ちゃんの頃から与えるのは止めましょう。スポーツドリンクも同じです。

甘くて美味しいので癖になりかねませんし、糖分が多いために虫歯の原因にもなりかねないからです。お水やお白湯、お茶を与えるようにしてください。

また、哺乳瓶を口にくわえたまま寝るくせがあるなら、なおしてください。こちらも虫歯の原因になる可能性が高いからです。

歯がためはあったほうがいい?

10ヶ月女の子 歯固め おもちゃ おしゃぶり

歯がためには、歯が生え始めた頃の、歯茎のむずがゆさといった違和感を解消する効果や、ものを噛むためのトレーニング効果があります。

むずがゆさなどの違和感からくる機嫌の悪さをよくしたい時、歯がためがあると便利です。

また、歯がためを噛むと、噛むという刺激が顎の骨の成長を促進しますし、実は脳の機能を高める効果もあります。

もし、歯が生えていない時期で、服やタオル、おもちゃ、絵本などをかじるようになってきたなら、歯がためを与えてみてはいかがでしょうか。

歯医者さんを選ぶ方法

では、赤ちゃんの歯医者さんを選ぶポイントについて紹介します。

小児歯科医院

一般の歯科医院でも赤ちゃんから大人まで誰でも診察してもらえますが、中には小児歯科を専門に標榜している歯科医院があります。

小児歯科医院なら、歯科医師が小児歯科専門医の資格を持って診療に当たっているので、小児歯科医院がおすすめです。

小児歯科専門医は、大学病院の小児歯科や、その他の研修施設で赤ちゃんや子供の歯科治療の研鑽を積んできています。

小児歯科専門医なら、赤ちゃんから子供まで、成長とともに変化していく身体や心の状態をしっかりと理解しているはずだからです。

通いやすいところに小児歯科医院があるなら、そちらを受診するのをおすすめします。

予防を重視している

赤ちゃんに限らず、子供の歯はむし歯になりやすい傾向があります。

むし歯を治療するのも大切ですが、予防することもそれにも増して大切です。将来を考えて、しっかり予防してくれる歯科医院を選びましょう。

ていねいな対応

子供にとって歯科医院という環境は、日常生活からあまりにもかけ離れた環境です。

歯科医院独特の音、におい、服装、すべてが赤ちゃんや子供にとって異質なものですから、どうしても緊張してしまいます。

ですから、いきなり治療を始めるよりは少しずつ慣れていってもらうことが大切です。でなければ、続かなくなるからです。

こうした点に注意し、いきなり治療を開始せず、やさしくていねいに接して、時間をかけて治療してもらえるところを選びましょう。

歯医者さんにいつごろから行くのがいいの?

歯科医院には、歯が生えてきたら、自覚症状がなくても定期的に受診することをおすすめします。

定期的な受診には以下のようなメリットがあります。

衛生状態のチェック

歯科医師や歯科衛生士が、専門家の視点で歯みがきがきれいに出来ているか、歯茎が炎症を起こしていないかをチェックします。

自宅ではなかなか見えにくい上顎の奥歯も、歯科医院で診察台にのってライトを照らすとよく見えます。

親御さんはきれいに磨けていると思っていても、見えにくいところの歯茎の縁などに磨き残しがあることが多いです。

そのままでいると、むし歯や歯茎の炎症を引き起こす原因になりかねません。

定期的な受診には、見えにくいところの磨き残しや、歯茎の炎症をチェックしてもらえるメリットがあります。

むし歯のチェック

むし歯は進行性の病気です。一度むし歯になると自然治癒は望めません。

放っておくとどんどん大きくなり、神経の治療をしなくてはならなくなったり、さらに進行すれば抜歯する他、治療法がなくなったりすることもあります。

もちろん、むし歯にならないのならそれにこしたことはありません。

しかし、もしむし歯になった場合に、出来るだけ小さなうちに治療できれば、神経の治療や抜歯に至ること防げる可能性があるのです。

ところが困ったことに、むし歯が小さいうちは、自覚症状がほとんどないため、なかなか気がつきません。

そこで、歯科医院に定期的に受診していれば、小さな段階で発見してもらえるという利点があるわけです。

癖のチェック

お口の癖は、歯並びを悪くしたり、顎の骨の成長に悪影響を及ぼしたり、呼吸器系の病気の原因になったりすることがあります。

中でも比較的多いとされるのが、口呼吸や舌癖です。

口呼吸とは、口で呼吸をする癖のことです。呼吸は本来口でするものではありません。口で呼吸していると、歯並びや顎顔面の骨格の成長発育が悪くなるだけでなく、呼吸器系の病気にかかるリスクが高くなります。集中力や免疫力に影響するという医学的知見もあります。

舌癖で多いのが、舌を前方に伸ばす癖です。この癖があると、歯並びや顎の骨の成長発育、発音が悪くなります。

その他にも、指を咬む癖、唇を咬む癖、つめを咬む癖などいろいろな癖があります。癖は早く発見できれば治しやすいですが、反対に長引けば治りにくいものです。

癖を早期に発見できるのも、定期受診のメリットです。

フッ素塗布

フッ素が、むし歯予防に効果がある話は前述した通りです。

フッ素には、塗布(塗る)・洗口(うがい)・歯みがき剤の3通りの方法があります。

赤ちゃんはうがいはできませんし、歯みがき剤を使うのも難しいです。フッ素の選択肢としては、歯科医院で行なう塗布法が最有力な方法になります。

フッ素の塗布法は、数ヶ月に1回するだけで効果がある上に、歯そのものをミュータンス菌の産生する乳酸によって脱灰されにくいように強くする効果では、フッ素の3通りの方法のうちで最も強い働きを示します。

フッ素塗布は自宅ではできませんから、定期的に歯科医院を受診するということは、フッ素塗布の機会を得ることにもなるわけですね。

歯医者さんに相談するべきことは?

女性

もしも、お子さんの歯で以下のようなことに気がついたら、歯科医院で相談した方がいいでしょう。

歯の生え方

1歳6ヶ月以降で、上下の前歯が噛み合わせられない歯並びになっていたら、舌癖や口唇癖などの癖が隠れている可能性があります。

受け口になっている場合は、単に歯の向きがずれているだけで、少しの調整ですぐに治ることもあります。

ですから、歯の生え方、並び方に異常があるようなら、歯科医院でまず相談しましょう。

歯の変色

むし歯になると、歯の色が変わってきます。

最初は濃い白色として現れてきます。濃い白色は、脱灰という段階を示しています。ミュータンス菌が産生した乳酸が歯を溶かし始めた段階です。

この脱灰段階では、お口の中をきれいにしておけば、唾液の働きで自然に治ってくることが期待できます。

むし歯がその次の段階に至ると薄茶色になり、次はこげ茶色と、どんどん色が濃くなってきます。

つまり、歯の色が変化する場合、たいていがむし歯が原因なのです。このように、歯の色が変化した場合は、早めに歯科医院で相談した方がいいでしょう。

まとめ

赤ちゃんは歯がない状態で生まれ、成長とともに順に生えてきます。

生え立ての歯は、とても弱くむし歯になりやすいものです。

生えてきたばかりのかわいい新しい歯を守り、その数年後に生えてくる永久歯にしっかりバトンタッチさせるためにも、赤ちゃんの歯をしっかりお手入れし、定期的に歯科医院でフッ素を塗ってもらいましょう。

そして、何らかの不安な点が生じれば、迷っていないで歯科医院で相談することをおすすめします。